2022年12月08日

映画「声もなく」(2022年・韓国)

『誘拐犯になってしまった青年と誘拐された少女。
社会から疎外されて生きる者たちの、つかの間の家族のような日々』
(公式ページより)

幼い妹と暮らすテインは、貧しさ故に卵販売の傍ら犯罪組織の下請けをして
生計を立てています。
身代金目的で誘拐された少女チョヒは女の子であるが故に父親は支払いを渋る。
そんな少女を預かることになったテイン。
貧しさ故のテインと女の子であるが故のチョヒ。
持てない者と持てる者。
テインとテインの妹とチョヒの3人の生活が始まります。

内容はかなりハードな場面もありますが...
この映画はテインを演じるユ・アインが素晴らしい!の一言。
観終わって「あ〜!主人公はしゃべれなかったんだ」と改めて気付きます。
耳は聞こえますが、喋る事は出来ないテインをユ・アインが
まるで声が聞こえるよう演技で魅せてくれます。
テインの不器用な優しさと、少女の残酷なまでの逞しさ。
ラストのシーンは「言葉もなく」でした。

ユ・アインは「えっ!シカゴ・タイプライターの人?」
別人の様でした。
ドラマ「シカゴ・タイプライター」では日本統治下で抵抗運動に身を投じている
青年と、青年の生まれ変わりの現代は作家...を演じていました。
現代の作家は「えっ!どこの組の方?」の様でしたが、過去の青年の時は
とにかくカッコ良い!ユ・アインでした。



posted by バリアフリーシアタースタッフ at 00:53| Comment(0) | 映画

2022年09月17日

映画『サマーフィルムにのって』(2020年・日本)

キラッキラの青春映画です。
高校の映画部に所属する主人公「ハダシ」は「キラッキラの青春映画」が嫌いな
女子高生。
彼女が敬愛しているのは勝新こと勝新太郎!映画「座頭市」が大好きなのです。
文化祭で上映する映画のプレゼンは「キラッキラの恋愛映画」に敗れます。
密かに時代劇の構想を練る彼女の前に、武士役にピッタリの青年・凛太郎が...。
渋る凛太郎を説き伏せ映画の撮影は始まります。
ゲリラ上映を企てる「ハダシ」
ところが凛太郎には秘密が...未来から来たタイムトラベラーだったのです。
果たして撮影は?上映はできるのか?

「勝新は色っぽいよね〜」「色っぽいのは雷蔵よ」「雷蔵はきれいすぎるのよ〜」
と、現代の女子高生らしからぬ台詞が...。
往年の時代劇俳優の名前が出て来て、私がタイムトラベラーになったようです。
今はネットで昔の映画が手軽に観る事が出来る時代です。
今どきの女子高生が、昭和の時代劇映画に魅せられるのも
あり得ない事ではないなぁ〜と納得。
ですが...さすがに昭和ではなく令和の時代です。
撮影カメラは何と!スマホ!成る程!そう来たか〜!!!
出演者は男優2人以外は私の知らない若い俳優ばかり。
一人はNHK大河「鎌倉殿の13人」で頼朝の息子役の「金子大地」と
朝ドラの「なつぞら」で老けた高校生役を演じた板橋駿谷(今回も老けた高校生役)
女優陣は全員???でしたが主演の「ハダシ」の殺陣は見事でした。

荒削りで低予算(多分)映画ですが、勢いのある映画愛にあふれる映画でした。
一見の価値あり...ですよ。

余談ですが...その昔、雷蔵と勝新の映画は殆ど見た私。今でも雷蔵派です。


posted by バリアフリーシアタースタッフ at 00:21| Comment(2) | 映画

2022年06月28日

映画『少年の君』(2019年・中国)

2011年の中国の架空都市が舞台です。
進学校に通う少女チェン・ニェン。
大学進学の為の全国統一テストを前に学校は殺伐としています。
母子家庭のチェン・ニェンは、貧しさから抜け出す為に必死で勉強しています。
そんな中、一人の少女がいじめを苦に飛び降り自殺をします。
それをスマホで撮影する生徒たち。
チェン・ニェンは大勢の生徒達の遠慮の無い目に晒されている彼女に
着ていた上着をかけてやります。
ところが、その事によって今度はチェン・ニェンがいじめの対象になります。
いじめを避けるために裏通りを帰る途中、暴行現場を目撃した事により
少年シャオベイと知り合います。
孤独な2人は心を通い合わせていきます。
「君は世界を、僕は君を守る」と、そっとチェン・ニェンを見守るシャオベイ。
統一試験が迫ったある日事件はおきます。

中国の過酷な受験戦争!まさに戦争です。学校はまるで軍隊のようです。
ヒリヒリと目を覆いたくなるような過酷な現実とイジメ。
受験に打ち勝つ事が、貧乏から抜け出せると信じる少女と、
彼女を支えることで自分の世界も変わると信じる少年。
若い二人の、お互いを信じる強い心が観ている者の胸を熱くします。

とにかく!主演の2人が素晴らしい!
少女チェン・ニェンを演じたチョウ・ドンユイは
10年前の「サンザシの樹の下」の時の透明感がそのままです。
存在感を消すようにたたずむ少女と、意志の強さを目に宿す少年。
イジメ、受験戦争に中国が抱える社会問題にミステリー要素も加わって
最後まで目が離せません。
間違いなく名作です。
是非!是非!観てほしい!

それにしても中国、この映画の公開をよく許したなぁ〜。


posted by バリアフリーシアタースタッフ at 17:27| Comment(1) | 映画